インプラント治療とは
インプラント治療とは、歯を失った箇所にチタン製のインプラントを埋め込み、その上にセラミックなどでできた人工歯を取り付ける治療法です。ブリッジや入れ歯とは異なり、硬いものをしっかりと噛むことができるので、天然歯のような咀嚼力を得られます。また、外見もとても自然に仕上がります。
メリット・デメリット
インプラント治療には、「しっかり噛める」「外見が自然」などの大きなメリットがありますが、デメリットもあります。せっかく高額な治療費をかけるのですから、治療が終わってから「こんなはずではなかった」と後悔することのないよう、事前にメリットだけではなくデメリットを知ることも大切です。すべて納得したうえで治療を受けられるよう、ご理解いただけるまでわかりやすくご説明するので、治療を受けるか否かをご検討する際の判断材料にしてください。
インプラント治療のメリット
◦咀嚼力を再現できる
顎の骨とインプラントが一体化して固定されているので、ずれたり外れたりすることなく、天然歯のように力を入れてしっかりと噛むことができます。
◦審美性に優れている
インプラントの上に取り付ける人工歯はセラミックなどでできており、天然歯のような色調や輝きを再現できます。また、留め金などを使用して取り付けるわけではないので、パッと見た限り、インプラントと気づかれることもありません。
◦顎の骨量の減少を防げる
歯を失うと、咀嚼による刺激が顎の骨に伝わらず、骨量が減ってしまいます。しかしインプラント治療は、顎の骨とインプラントが一体化して固定されているので、顎の骨に咀嚼の刺激が伝わり、骨の量の減少を防ぐことができます。
◦噛み合わせを維持できる
インプラントは『第2の永久歯』ともいわれますが、セルフケアをきちんと行ないメンテナンスを定期的に受けていれば、長期にわたって安定した噛み合わせを維持することができます。
インプラント治療のデメリット
◦治療期間が長い
手術の方法によってかかる期間は異なりますが、インプラントが顎の骨と一体化するまで、一般的に下顎で約3ヵ月、上顎で約6ヵ月かかります。その前後に治療を行なうことを考えると、約6~12ヵ月かかることになります。
◦治療費が高い
インプラント治療は、健康保険が適用されない自費診療となるため、治療費が高額になります。埋め込む箇所や人工歯の素材などによって異なりますが、平均すると1本約30~40万円となります。
◦治療不可能な場合がある
糖尿病・心臓病・高血圧などの疾患をお持ちの方は、治療を受けることができない場合があります。
※医院によって、顎の骨の高さや厚みが不足している方(骨量の少ない方)は治療を受けられないと判断されますが、当院では骨造成術などの補助手術を行なうことができるので、他院で治療を断られた方はぜひご来院ください。
治療の流れ
インプラント治療をご検討の方は、手術がどのような流れで行なわれるのか、非常に気になるのではないでしょうか。
ここでは、術前のカウンセリングから術後のメンテナンスにいたるまでの流れをご紹介しているので、
治療の全体的な概要を把握することができます。
カウンセリング
インプラント治療は外科手術をともなうため、治療を受けるにあたっては誰しも不安や恐怖心をもたれることでしょう。それらを解消して治療を受けられるよう、ご不明な点や疑問点、ご要望などはお気軽にお話しください。
※お電話での簡単な質疑応答は無料で行なっています。
※セカンドオピニオンも歓迎しますので、詳細についてはお問い合わせください。
検査・診断・治療計画立案
口腔内写真・レントゲン撮影、口腔内模型製作のための型取りなどを行ないます。後日、それらの検査結果や資料に基づいて診断が行なわれ、治療計画が立案されます。その際、治療法、治療期間、治療費などの詳細について、わかりやすく丁寧にご説明するので、ご不明な点や疑問点、ご要望などはお気軽にお話しください。
精密検査
全身の健康状態を把握するため、血液検査やCT撮影などの精密検査を行ないます。
手術前の準備
手術の予約、手術に際しての注意点などの詳細をご説明します。
歯垢や歯石を取り除き、口の中を清潔な環境にして手術に備えます。
手術
患者さまの症状や骨の状態などに合った手術を行ないます。手術の方法は、下記の2つから選びます。
2回法
2回法は、歯肉を切開する手術を2回行ないます。
1次手術で歯肉を切開し、ドリルで顎の骨に穴を開けてインプラントを埋め込みます。その後、歯肉を縫合して閉じ、インプラントと骨が一体化するまで2~6ヵ月の治癒期間を設けます。インプラントと顎の骨が一体化したら、2次手術で再び歯肉を切開し、インプラントの頭部に「アバットメント」(人工歯との連結部分)を取り付けます。最後に人工歯をアバットメントに取り付け、治療が完了します。
手術を2回行なうので患者さまの負担は大きくなりますが、インプラントが顎の骨にしっかり固定した後に人工歯を取り付けるため、ほとんどの症状に適用できます。顎の骨量が少ない方は、この2回法で治療を受けていただきます。
1回法
1次手術(インプラント埋入)と2次手術(アバットメント装着)に分かれている2回法に対し、1回法では歯肉を切開する手術を1回しか行なわず、インプラントとアバットメントを1度の手術で取り付けます。
インプラントとアバットメントが一体化したパーツを埋め込む「1ピース型」と、インプラントを埋め込んだ後でアバットメントを取り付ける「2ピース型」があります。
また、インプラントとアバットメントだけでなく、仮歯や人工歯まで1回の手術で取り付ける「即時負荷」という方法もあります。
短期間で治療が終わりますが、骨の高さや厚みがあり、さらに硬いことが前提となるので、どなたにでも適用できるわけではありません。
人工歯の製作・装着
最初に仮歯を装着して噛み合わせや装着感などを確認して調整し、人工歯を製作するための型取りを行ないます。特に問題なければ、最終的な人工歯を製作し、取り付けます。その際、インプラントを長期にわたって使用していただけるよう、衛生状態を維持するためのセルフケアの方法もお伝えします。
メンテナンス
インプラント治療後は、セルフケアをきちんと行なっていただくのはもちろん、メンテナンスを定期的に受けていただきます。口の状態を確認することで衛生状態が保たれ、インプラントをより長く快適に使用していただけます。メンテナンスの頻度は患者さまによって異なりますが、平均すると3ヵ月から半年に1回となります。
なお、当院では『保証制度』を設けていますが、定期メンテナンスを受けていない場合は保証対象外となってしまいますので、必ず受けるようにしましょう。
補助手術
患者さまによっては、治療前や手術時に補助手術が必要になります。
補助手術とは、骨量が少ない顎骨に高さや厚みを出したり、ダメージを受けている歯周組織を再生させたりするものです。
インプラント治療に際し、より良い結果を得るために周辺環境を整え、インプラント埋入後に安定しやすくするために行ないます。
上顎洞底挙上術
上顎洞(鼻の横から奥に広がる空洞)の底部に骨を造成・移植する治療法です。
骨量が非常に少なく、インプラントを同時に埋め込めない場合は、上顎洞挙上術を行ない、6~9ヵ月後にインプラントを埋め込みます。ある程度の骨量があり、インプラントを埋め込める場合は、上顎洞挙上術と同時にインプラントを埋め込みます。
手術には「サイナスリフト」と「ソケットリフト」(歯槽頂上アプローチ)、この2種類の方法があります。
◦サイナスリフト
上顎の骨が5mm以下と薄く、インプラントを固定できない場合に行ないます。上顎洞の側面を切開してシュナイダー膜(上顎洞底粘膜=上顎洞と歯槽骨の間の粘膜)を押し上げ、それによってできた空間に骨移植(自家骨や人工骨の移殖)をすることで、骨の厚みを作り出します。骨が定着するまで約3~6ヵ月ほど待ち、その後インプラントの手術をします。 骨造成量が多く、歯科医師が術野を確認しながら行なうことができますが、難易度の高い手術になります。
◦ソケットリフト
上顎の骨に5mm以上の厚みがある場合に行ないます。歯を失った箇所からドリルで穴を開け、そこからシュナイダー膜を押し上げます。それによってできた空間に骨移植をし、インプラントを埋め込みます。 骨造成量が少なく、歯科医師は術野を確認しながら行なうことができませんが、サイナスリフトに比べて容易にでき、患者さまの負担も大きくありません。
歯周組織再生療法
歯周病などでダメージを受けた歯周組織を回復させる目的で行なう治療法です。
主な歯周組織再生療法には「ボーングラフト」「GBR法」「GTR法」などがあります。
◦ボーングラフト(骨移植)
骨量が大幅に不足している場合、ほかの部位から持ってきた骨を移植することで補う治療法です。骨移植の方法としては、ご自身の骨を移植する、患者さま以外の骨から作られた骨補填材を使用する、ハイドロキシアパタイトなどの人工骨を使用するといったものが挙げられます。
◦GBR法
骨量の不足によりインプラントが骨の中に収まりきらず、一部が骨の外に露出してしまう場合に、骨組織の再生を促して必要な骨の量を確保する治療法です。インプラントを埋め込む際、骨量の少ない部分に骨移植したり骨補填剤を入れたりし「メンブレン」(人工膜)で覆って骨の再生を促します。約4~6ヵ月ほど待ち、人工歯を取り付けます。
◦GTR法
歯周病などで歯周組織がダメージを受けている場合、歯周組織の再生を促す治療法です。「メンブレン」で覆って軟組織の混入を防ぎ、歯槽骨や歯根膜が再生するまで数ヵ月待ちます。その後、通常のインプラント手術を行ないます。
【インプラント治療のリスク・副作用】
・機能性や審美性を重視するため自費(保険適用外)での診療となり、保険診療よりも高額になります。
・インプラントの埋入ともない、外科手術が必要となります。
・高血圧症、心臓疾患、喘息、糖尿病、骨粗鬆症、腎臓や肝臓の機能障害などがある方は、治療を受けられない場合があります。
・手術後、痛みや腫れが現れることがありますが、ほとんどの場合1週間ほどで治ります。
・手術後、歯肉・舌・唇・頬の感覚が一時的に麻痺することがあります。また、顎・鼻腔・上顎洞(鼻腔の両側の空洞)の炎症、疼痛、組織治癒の遅延、顔面部の内出血が現れることがあります。
・手術後、薬剤の服用により眠気、めまい、吐き気副作用が現れることがあります。
・手術後、喫煙や飲酒をすると治療の妨げとなるので、1週間は控えてください。
・インプラントの耐用年数は、口腔内の環境(骨・歯肉の状態、噛み合わせ、歯磨きの技術、メンテナンスの受診頻度、喫煙の有無など)により異なります。
・毎日の清掃が不十分だった場合、インプラント周囲炎(歯肉の腫れや骨吸収など)を引き起こすことがあります。